第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
(お礼を言ってくれた!)
ちょっとした事なのに舞い上がりそうな程、嬉しかった。
(…どうしちゃんたんだろ…)
私は…
この気持ちの名前を知ってる…。
でも、迷惑かも知れない…
気づいたばかりのこの気持ちを、
今はわからないフリをする事にした。
「疲れてる。
アンタも、さっさと入るよ」
俺は一日中俺を待って疲れてるはずの華月を促し、手を差し出した。
「え?」
「乗りなよ」
「…華月…みたいにヨチヨチ歩いてたら日が暮れる」
「ヨチヨチって!赤ちゃんじゃないよ」
「最初の頃、着物の幅に慣れなくて
ヨチヨチ、ヨタヨタしてたくせに」
フッと鼻で笑うと
「ひどい、ひどいッ!」
と憤慨し始めた。
(面白っ)
「で、乗るの、乗らないの?」
「…乗る……」
クククク…
俺は笑いが堪えられなくなって、
華月を馬上に引っ張りあげても笑っていた。
「……家康…そんなに笑わなくても良くない?…」
いつまでも笑いを収められない俺に、
華月が恨めしそうな口調で言った。