第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
「俺が、怖い?」
一歩踏み込む。
「ううん」
華月がフルフルと首を振る。
「嘘」
「嘘じゃないよ。
今はもう、怖くない」
(前は怖かった?)
「…前は…怖かった…けど…もう、怖くない。
私が家康のこと、ずっと誤解してた。
ごめんなさい」
高熱で何日も寝込んだ時、
朦朧とした意識で私が、目を開けると、
いつも家康が傍にいた。
昼間は女中の誰かが付いていたが、
夜は家康が一晩中付いていてくれた。
腕組みして座ったまま寝ていたりしたけれど、
夜中、熱で唸っていた自分の額や首筋を冷やしてくれたのも家康だったと、その、ある時私は知った。
実はずっと心配して、看病してくれていた。
いつも冷たい言葉を投げ掛けられる、と思っていたのは、心配している事を上手く表現出来ていなかったのだと、ようやく気付いた。