第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
俺は薬差しを華月の口に入れ、傾けた。
多くを溢した。
(多くは飲まなかったな)
それでも、俺はずっと傍らにいた。
次の日も、その次の日も華月が眼を覚ましていない間は傍らについていた。
華月の高熱は5日程続いた。
「華月様、大丈夫でございますか?
熱も少しずつ下がっております。
何かお召し上がりになられますか?」
侍女が尋ねるも、華月は「欲しくない」と言っていた。
「入るよ」
「家康様っ」
侍女が慌てて頭を下げる。
「かしこまらなくていいよ。
華月にこれ飲ませて寝かせて」
「家康」
華月が掠れた声を出す。
「薬湯だから」
「ありがとう…」
「ひどい顔、見てらんない」
俺の言葉を聞いた侍女が絶句している。
「…うん……」
華月が苦笑いを浮かべて俺を見る。
((だから、早く治せってこと))
襖越しに侍女が華月に薬湯を飲ませている声が聞こえた。
(家康…ごめんね…私……)
華月はまた眠った。