第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
そんな事があって暫く華月は大人しかった。
そして、針子仕事に根を詰めていた過労か、
心労かは分からないけど、
「倒れた?…」
「今、部屋に寝かせたんだが、熱が高くて」
秀吉さんがそう言って来た。
「解熱湯、できたら持ってってやってくれないか?
俺はこれから出掛けなくちゃならないんだ」
「…分かりました」
本当に忙しいのだろう、秀吉さんは必要な事だけ言うと急ぎ足で出て行った。
薬湯の入った急須をもって華月の部屋へ向かった。
苦しそうな息をして、何度も何度も寝返りをうつ。
「……」
見ていたってどうにもならないのに、
俺はただ苦しそうな華月をみていた。
(この娘も、このまま、高熱が続けば死ぬのだろうか…)
そんな縁起でもない事が脳裏を過った。
四方手を尽くしても助からないこともある。
助けなかったら、
助からなかったら…
(必死にもがかなければ…死……
今の俺は、弱いまま……)
俺は、弱かった俺を忘れられない。
いや、忘れない。