第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
今度は、憤りを抑えてなんとか、言葉を紡ぐ。
「刀がその肉を貫通するだけで、
頭を打ちつけただけで、
風邪を拗らしただけで、
ほんの、些細な要因で、命の火は消えるんだ。平和な場所から来たアンタが、それを、俺達より良く知ってるって?
あり得ないだろ」
乱暴されそうになり、捕まっていた恐怖で青くなっていた華月の顔が、赤くなる。
申し訳なさそうな表情は、無知を恥じている様だった。
「言っとくけど、
アンタが嫌いだから、こんな事言ってるんじゃないから。
それに、昼間は言い過ぎたよ」
何故か弁解の言葉を口にしていた。
「え…」
「嫌いだったら、言わない。
死んだって構わないんだ……
ほらっ、雨、降りそうだから、早く帰るよ」
「家康…」
何か言いたそうな華月。
「秀吉さんが心配してた。
早く帰らないと、小言、増えるよ」
背中を押して、一歩 踏み出させた。
城に着くまで俺の前を歩かせた。
はぐれないように、
背後から誰かに捕まらないように。