第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
まだ6、7歳くらいの男児が男に捕まって泣いている。
「えぇーーーん、ぅええーーん」
『ずっ…グズ、ぅ…うぅ…城に帰りたいよぉ…』
泣いていた幼い自分が重なる。
「泣くな、男だろ」
目の前の男児にか、昔の自分にか、
叱咤した。
(俺は、もう、弱く、無いッッ)
「アンタ達に恨みも何にもないけれど、
道理に外れる事は、見て見ぬ振りは出来ない。
痛い目見たくなかったら、その子を離して此処から去れ」
威嚇ではなく、忠告だ。
俺は政宗さんみたいに、乱闘好きじゃない。
だって面倒だし、体力使うし。
だから、出来れば、相手にしたくないのに。
男の子とは違うヤツに捕まっている華月に恨めしい思いで視線をやった。
こっちも手を出さなければ、
あの子を連れて帰れないし、
俺は仕方なく、短刀を柄のまま構えの姿勢をとった。