第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
「おい、家康、
華月知らないか」
「あの子、居ないんですか」
「特に用事ではないんだが、昼過ぎから城にいないみたいなんだ」
心配そうな秀吉。
「あんなでも、信長様か手元に置いておくと言った女だからな。
見つけたら連れて帰ってくれ」
「はい…」
何処に行ったかは知らないけど、
(多分、俺のせいだよな…)
俺は後味の悪い気持ちを抱いたまま、
城下へ下りた。
市を歩いていると、女性が集っている露店が眼にはいった。
「華月?」
似た後ろ姿の着物があって、名を呼んだ。
が、その着物は振り向かない。
(違ったか…)
露店を過ぎてまた歩きだす。
(弱ったな…)
真上を見上げれば黒い雲。
(雨、降る前に、見つけなくちゃ)
足を早めた。
長屋の裏、
細い路地、
行きそうな甘味屋
行きそうな反物屋、
「居ない…何処へ…」
川沿いを川下へ早足で歩いていると、
「やめてよ!!、その子を離しなさい‼︎」
女性の大声が聞こえた。
「こんな小さい子連れて、どこ行く気⁉︎」
キャンキャン吠えるこの声。
はぁ…
(また厄介事に首突っ込んで…)