第38章 その手をいつまでもーR18ー(幸村)
(気のせい?)
「…ゆき……目を開けてよ……」
(怖いよ…)
笑う時も
泣く時も、
隣に居てくれた。
大きくなってちょっと口が悪くなった。
けど、子供の様に笑って、
怒って、喧嘩して、また仲直りした。
誰よりも近くに居てくれた。
そんな幸くんが居なくなったら、なんて考えた事なかったけど、考えて怖くなった。
「幸…ゆきぃ…」
(な…く、な…)
声が出なくて、手に力を入れたけど、
弱々としか握れなかった。
「‼︎
幸っ!」
(泣くな…華月…泣くな…)
「よかった!幸っ‼︎」
「こんど、は…ま…る…て…い、たろ…」
掠れた声しか出なかった。
身体中が痛くて笑ってやれなかった。
泣くなと言ったのに華月は更に涙を流した。
俺はガラス片での負傷とコンクリート片での背中への打撲だった。
地震は広範囲に大きな被害をもたらしていた。
カフェはどうやらガス漏れに火が引火した様だったが、幸い大火事にはならなかった。
俺以外にも怪我をした奴が数人いた様だが、それも重症ではなかった。
3日程で退院し、普通の生活に戻った。