第37章 幼い恋の先(三成)
「華月様、もしよろしければ……」
三成は慎重に丁寧に、言葉を選ぶ。
2度と悲しませない為に。
「今からでも、もう一度私と、恋をしていただけませんか?」
三成が優しく問うけれど、
華月は更に涙を溜めて、フルフルと首を横に振る。
「え?…遅すぎるましたか…」
この言葉にも、プルプルと首を横に振る。
華月の眼から大粒の涙がボロボロと溢れ出す。
三成はしょんぼり、眉を下げ、肩を落とす。
「ちが…違う…の…」
「と、言いますと?」
「…も…一度……なくて…」
華月は涙と心が急いて、言葉が追いつかない。
「私は…ずっと…三成様に恋をしてるから…」
華月の途切れ途切れの言葉の意味。
(それは……)
『ずっと恋しているからもう一度の恋なんか必要ない』
「私の、良いように解釈してしまいますよ?」
華月は返事の代わりに、
三成に回した腕にキュッと力を込め、
埋めた頬を押し付けた。
三成は一気に真っ赤になった。
「華月様っ、
もう、どんな事があっても離しません。
今度は本当に、私に貰われて下さい。
お願いします」
「…はい」
華月が涙に濡れた顔を上げ、
三成を見て、小さく返事をした。
「三成様…こんな私を貰ってもらえますか…?」
照れた顔が、幼い頃の華月そのままで、
三成は幸せな気持ちになった。
「もちろんです。
貴女は私の許婚ですから」
華月がはにかんで笑った。