第37章 幼い恋の先(三成)
(忘れられたなら……私はここにはいない…)
「私も…会えないから会いたくて…
忘れようと思えば思うほど、貴方を思うから…忘れられなくて……」
(貴方の事ばかり考えた)
「…会いたかった…どんなに夢見たでしょう…」
三成への恋心に蓋をして嫁いだつもりでも
蓋は出来てなかった。
笑いかけられても、
優しい言葉をかけられても、
贈り物をされても、
何をされても、心を開けなかった。
「嫁ぎ先を不利にしてでも…駄目な嫁ですね…」
華月は自嘲気味に苦笑する。
「織田に私がいる事を知って、の密通だったのでしょうか」
「はい」
小さな声。
「私の為に危ない事はしないで下さい」
「ごめんなさい…」
「でも、ありがとうございます。
私は、貴女がそんな事をしなくても、
貴女を迎えに行くつもりだったんですよ」
華月は信じられないと言った表情で三成を見る。
「貴女に危ない事をさせてしまったのは、貴女を迎えにゆくのがだいぶ、遅くなった私の責任ですね。
申し訳ありません…」
本当は、婚姻を破談にしてからすぐにでも迎えに行くつもりだった。
けれど、安土に参城してから、何があっても揺るがない確固たる地位を得る事が必要だと考えた。
結果、直ぐに迎えに行けなかった。
(私の力不足でした)