第37章 幼い恋の先(三成)
雷霆飛竜ノ如ク赴ク
織田軍の真骨頂。
出兵、進行、旋回、全てが速い。
敵が守りを固める前に到着し、攻撃する。
手薄な処に意表を突かれ、
なす術もなくあっという間に陥落する。
近くにいる隊を上手く回し向わせる
策士の手腕だ。
戦場になった瀬上城は1日も持たず、
翌日には焼け落ち、田村の兵は
皆 灰になった。
「首謀者が戻ってくるのは感心しないな」
離れた場所から焼け落ち、崩れた城跡を見る女の後ろ姿に、光秀が言った。
「……」
女は何も言わない。
「自分の身が危険に晒されていたかもしれぬのに、破邪顕正とは大したものだ」
「その様な…恐れいります…」
光秀の言葉に恐縮する女。
「…それに……私にはコレくらいしか、
あの方の役に立つことが出来ません…」
そう言った女の声音は寂しげでいながら、
とても想いのこもったものだった。
「昔、約束を反故にした。
お前は捨てられたのだぞ?
そんな家に、お前がそれ程 操を立て、
義理立てする必要はないだろう」
田村氏を滅ぼす為の情報を流し、
工作に仁与した女を光秀は何故か挑発する。
嘲るように光秀の声が笑っていた。
※らいていひりゅうノごとクおもむク……
激しい怒りは飛ぶ龍のように非常に速くやって来る。
※破邪顕正…邪道を破って正道をあらわす。