第37章 幼い恋の先(三成)
16歳になった時だった。
「華月…すまないが、石田様とのご縁談は守れそうにない」
「……」
絶句だった。
暫く呆然としてから
「何故ですか?」
と、なんとか絞り出した。
「ウチより大きな家が、石田様に婚姻を持ちかけているそうだ」
父は申し訳なさそうな顔をしている。
「…嫌だ…と言ったら…?」
勿論、石田様が困る事になるだろう…。
そんなのわかっている。
「父上、私の許婚は華月様ではございませんか」
三成も父に抵抗していた。
「幼少の頃からの約束を反故にするのですか?
たかが、娶る女1人のことではございませんかっ」
「たかが、だが、されど、だ。
力のある家の女を貰うに越した事はない」
膝を前に出して訴えるも、
この世の正論を突きつけられる。
「クッ…」
父の言う事は正解ではない、けれど、
この世の正論に三成は唇をかみ、
優しい菫紫の瞳を伏せた。