第36章 死に損ないの嫁ぎ先ー後ー(元就)
悪戯な笑顔。
自信満々の言い草。
家来達をまとめる号令の声。
意地悪で気を紛らわしてくれる気遣い。
揶揄われるのも楽しかった。
初めて触った魚。
初めて知った時化の船。
初めて見た馬のお産。
焦がしてしまった飯釜。
味の薄い料理。
薬の調合。
全部、元就様に教わった。
生きる為の全て。
全力でやる事の楽しさ。
(意地悪に褒めてくれるのも、
なんだかんだ言いながら面倒みてくれるのも)
全部 嬉しかった。
(私は……)
あの日から15日は過ぎただろう。
月のない日の夜、
華月が元就の部屋を訪れていた。