第35章 死に損ないの嫁ぎ先ー前ー(元就)
ははは…
ようやく、思考が追いついて、
乾いた笑が華月から出た。
「…やだな、私、行くところなんてないですよ。ぁははは…」
笑い声はすぐに嗚咽に変わった。
「ひっ…ぅぇ…酷い、よ、元就様…ぐず…ぇっふぇ…
…今更、…捨てる…なんてっ…ぇ…ぐっ…」
(だよな…)
酷いとは分かっていた。
もう、手放し難くなっている事に、
元就自身が気付いてしまった。
けれど、『俺に嫁げ』 などと今更言えるわけがない。
そんな気もないのに、生き方を教えると言う勝手な名目で、華月に破瓜の血を見させ、それ以来、華月が拒まないのを良いことに何度も軀を重ねた。
(拒まないんじゃなくて、拒めないのをわかってて…)
そんな卑怯で汚い自分。
そんな自分に嫁げなどと言えない。
ただ傍に居てくれと言うのも酷だ、
だから……
(俺を軽蔑し、出ていってくれよ…)
「捨てるの?…」
「ああ」
「…本気で…?」
「ああ」
「何で?…私、…元就様の傍にいたい…」
「…駄目だ…」
「……」
元就は自分でも驚くほど意思の弱い声でなんとか、拒否した。
華月が何も言わなくなったので振り向いて見れば、お粒の涙を落として、静かに泣いていた。