第35章 死に損ないの嫁ぎ先ー前ー(元就)
元就が形見だと持ち帰ってくれたのは、
父が大切にしていた刀と、母が使っていたつげ櫛。
沢山の思い出のある物も、
大きくはない城も、
もうないのだろう…と華月は思った。
それから、元就は出て行けとも、
当初の話を通して『嫁げ』とも言わず、
自分の居城に華月を置いていた。
寧と華月が話す声、笑う声。
(女がいると言うのは華やかなもんだぜ)
サワサワと落ち着かない春の日が続いている様に感じた。
月日が経てば情が湧く。
手放し難くなるとはわかっていたのに、
幼さか、世間知らずか、少々不安の残る華月を何処かにやる気に、なかなかなれず………
月日が経つのは早く、
気づけば1年が過ぎていた。