第35章 死に損ないの嫁ぎ先ー前ー(元就)
「俺はこれから、お前の親父の命を貰いに行く」
元就は静かにそう告げた。
華月の顔が青ざめた。
「………」
(松寿丸って言った……この人が、毛利…元就…?)
華月は『敵は毛利!』父の言葉を思い出した。
黙って行っても良かったが、後で知って恨まれたり憎まれたりするのも面倒だと元就は思った。
だから、告げた。
目の前の元就は真っ直ぐに華月を見ている。
(逃げも隠れもしない…)
悪いとも、申し訳ないとも思っていない様に華月には思えた。
ただ、ただ、強い眼が。
これはこの世の宿命なのだ。
(だから、私ももう…)
華月はゆっくりと腰を折ると、
畳に額が付くほど、深く平伏した。
その様子に元就は眼を丸くした。
「お前…」
(腹を括ろう…)