第35章 死に損ないの嫁ぎ先ー前ー(元就)
「父上の処を飛び出して来たのか」
「……」
俯く華月。
「家の滅亡が嫌か?」
フルフルと否定する。
「一緒に死のう、と言われたから怖くなったか?」
(言われたなら…怖くも悲しくもなかったっっ)
クッ と奥歯を噛んだ。
フルフルと華月はまた首を横に振った。
独りで生きろと言われたことが、
悲しかった。
「(父様…母様…)」
ポトリと涙が手の甲に落ちた。
「わ、悪い、泣かすつもりはなかったんだっ」
元就が慌てて謝る。
フフフッ…
華月が笑った。
「何で笑うんだよっ」
フフフフフフ…
横暴に見える元就が童みたいにムキになるから、華月は余計に可笑しくなって更に笑った。