第33章 言葉にして…ーR18ー(光秀)
光秀の腕の中には憧憬(あこがれ、心を奪われた様)が具現化されて存在している。
何度も絶頂に酔って眠ってしまている華月だ。
穏やかで幸せそうな華月の寝顔を見ながら光秀は思う。
(闇を歩く俺には光のお前は似合わない…なのに…)
光があるから闇がある。
闇が有れば光は必要なのだ。
無い物を乞い、
無い物に焦がれるのは
自然の摂理なのか…
強欲な人の性なのか…
心が欲したのなら、抗えないものだ。
(口にすれば、歯止めが効かなくなる、
欲しくて堪らないから、だから…)
揶揄ってみたり素っ気なくしていた。
それなのに、
「敵わないな」
悩んだり、沈んだ顔を見るのは心が揺らいだ。
だから、
つい、今日みたいに「言ってみろ」と促してしまった。
そして、溺れてしまったのだ。
溺れると分かっていた。
「フッ…好きだぞ…華月…」
「…ぅん……みつ…で……」
「こんなに好きだと言ってやったのに…
どうも、俺は信用が無い…だろう?クク」
髪を撫で、指で頬に触れ、背中に腕を回すと、掠めるだけの口付けをして、
「また、明日、な」
光秀も眼を閉じた。
些細な出来事でも心を大きく動かすものだ。
翌日から、華月がまた良く笑うようになったのは言うまでもなかった。
ー了ー