第31章 春待ちて氷柱落つー後ー(秀吉)
「藤吉にぃ…私、帰ったら、出て行くよ」
鼻水を啜りながらそう口にした。
「華月?」
驚いた藤吉にぃが私を信じられない、と言った顔で見ている。
「ずっと苦しめて、ごめんなさい」
本当は解ってた。
「藤吉にぃのせいで兄様が死んだんじゃないって」
誰かに擦り付けてた。
「誰かのせいにして目を逸らしてた……
でも、もうそうは言ってられない。
私がここにいたら、藤吉にぃはずっと苛まれる。苦しいままだから」
「出て行くのか…?」
華月が頷く。
出て行く…
俺の傍を?
「…だ…駄目だ」
「え?」
「俺が居る。
俺がお前に、生きる意味を与へるっ。
だからっ、だからっ…何処へも行くな」
再び胸に抱き締めて閉じ込めた。
「俺の傍で笑っててくれ。一生」
「と…にぃ…でもっ…」
「お前が俺を憎んでても、
俺はお前が大切で…その…好きだ////。
農民の出でもでも構わない。
俺だって貧しい出だっ」
随分必死だと思われただろうか。