第31章 春待ちて氷柱落つー後ー(秀吉)
皆、死んだ。
戦が奪っていった。
私は独りだ……。
「誰も、いない…」
声になって零れていた。
両手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。
「そんなことない。俺がいる」
秀吉様が、頭を撫で、肩を抱いてくれる。
「…そう、だけど…そうじゃ、ない……」
頭を振って否定した。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔は、
秀吉様の胸にあった。
「俺達は民に戦を強いているつもりはないが、結果、そうなっていて…酷い事をしている…なじられても、罵られても、憎まれても仕方ない」
私は秀吉様の腕の中で、懺悔のような話を泣きながら聞く。
「…でも、進むしかないんだ…
犠牲になつた人達の為にも。
そして、悲しい思いをさせてる、残された人達の為にも……すまない…」
すまない… その辛悲の声音に、私の涙腺は崩壊した。
「いつか…近く、戦のない世を創るからっ」
切な想い。
信念。
私はこの人を苦しめてたんだ。
あの日自暴自棄に発した言葉で、
ずっと…ずっと…
苦悩させ、後悔させ、懺悔させ…
この人の志を否定してた。
自分の感情だけで…苦しんでたのは自分だけみたいに……。
「ごめん、ごめん…ごめんなさい、
藤吉にぃ〜…ぅわぁぁーーん…あぁぁ…」
苦しめてた。
酷いのは私だ…
もうこの人の罪悪感に漬け込んで、
ここに居座る事は出来ない。