第31章 春待ちて氷柱落つー後ー(秀吉)
秀吉様…藤吉にぃ様は、私を妹のように思ってくれてるから、そんなに優しくしてくれるの?
私はにぃ様を…。
「藤吉にぃ…私は、2年前のあの日、
にぃ様に酷い事を言ってしまった?」
「あの日?」
「兄様の屍の傍で…嘘つきだって…」
「ああ、あれか…いや、本当の事だしな。
戦のない世を作ると言う理由を前提に戦をし、沢山の民を犠牲にし続けている俺達の罪だと、お前に言われてハッとした」
神社の境内を歩き話す。
「あの日藤吉にぃも、皆、皆、憎かった。
どうにかなりそうだった。
どんなに嘆いても、悲しんでも、もう帰って来ない……
今も憎いし、生きる意味が解らない…」
私は俯いて歩く。
「いくらでも憎くんでくれてもいい…
だから、自害するのはやめてくれ」
辛そうな秀吉様の声に、私は顔を上げた。
真っ直ぐで真剣な顔が私を見ていた。
「藤吉にぃ…私を生かすのはなんで?
私が死んでもにぃ様には何のことないはすだよ?」
「そんな事言うなよ、華月……」
やはり、明確な答えはもらえなかった。
(私は、なんて言って貰いたいの?)