第31章 春待ちて氷柱落つー後ー(秀吉)
「その辺で拾った村娘に嫁に行けとか、
あり得ないだろ。
そりゃ、怒るぜ。
その妹とやらは自分の身の程をよく弁えてるな。
特に、お前よりは」
政宗は全面的に華月の味方をする。
「……」
返す言葉がなくて黙っていると、
政宗が続ける。
「お前は何故、死んで欲しくない?」
「命を粗末にするもんじゃない」
「落ち着いたのに、何故、村に帰さない?」
「親兄妹もいない。独りだから」
「お前は何故、自分の傍で生きろ、と言った?
ここに置いてどうしたい。
囲うのか、女中として使うのか、
妹として縁組するのか?」
「……それは…」
「考えた事がなかったか?無責任だな」
政宗は容赦なく俺を責める。
「妹だと言って目をかけている娘を、
誰かに嫁がせてお前は平静でいられるか?
よく、考えろ。
世話焼きの人たらしはコレだから困るんだよ」
「何だよそれ」
「誰にでも世話焼いて、優しいから自分の思いも、相手の思いも判らなくなるんだよっ」
(男に、俺の傍で生きてくれ、って言われりゃ、誰だってそう思うだろうが。
それなのに嫁に行けって…
それがわからないってどーなんだ…)
政宗は心底、秀吉を憐れみ、
心底、華月に同情した。