第30章 春待ちて氷柱落つー前ー(秀吉)
それから華月の3度目の自害はすぐだった。
(ん?あれは華月だな)
橋の上から見えた河原の華月。
川岸の方へフラフラと歩くと、
しゃがんで、小石を投げている。
感情の読めない表情で、ひとつ、ふたつ…
水面に波紋が広がって波立つ。
それを見る俺の心も波立った。
「……」
華月の唇が何か言って立ち上がる。
俺は華月へと駆け出した。
暦では春が来たとは言え、まだ寒い冬、
「くっそっ、馬鹿」
夕暮れの川なんかに入ったら…
急に深くなる流れの早い川、
しかも、今年は水量が多い。
河原に降りた時、華月の軀は腰より上しか見えなかった。
「華月!はやまるなっ」
聴こえてるはずなのに、
止まるどころか振り向きもしない。