第29章 目醒めなくなるまでの幸せは(光秀)
家康が御館様に知らせておく、と言って帰って行った。
(派手にもらったもんだな…)
近距離だった事もあって、脇腹を弾が貫通していた。
肉は抉られていたが内臓がやられずすんだ。
不幸中の幸い。
「本当に、悪運が強いですね」と家康が嫌味を残していた。
家康が帰ってから疲れてまた眠った。
あれだけで疲れるとは、回復はまだ遠いようで、
眼を開けてはまた眠り、
眠ってはまた眼を開ける、を繰り返した。
眼を開けるたび、脇腹がズグズグと痛む。
シクシクと痛む…までには当分かかりそうだ、っと思えば苦笑が浮いた。
いつの間にか夜になっていた。
行灯に火が点いている。
「…あ、光秀さん、目が醒めましたか」
俺が身動ぐと気付いた華月が加減を伺って来た。
顔を向けてみれば、膝の上に着物が乗っている。
ずっと俺の傍で縫い物をしていたらしい。
朝と同じ言葉を聞いた。が、
朝とは違うホッとした嬉しそうな声音だ。
優し気に笑っている。