第29章 目醒めなくなるまでの幸せは(光秀)
「光秀様!」
家臣が口々に俺を呼んでいる…。
「大丈夫です。皆さんは騒がずに、行進してください!
光秀様、大丈夫ですか?光秀様⁉︎」
誰だ……三成?
温和な三成の慌てた様な声を聴いた気がして、
意識がなくなった。
それから10日経った朝か?
ようやく目が醒めて、最初にお前の顔を見て声を聞いた。
それから、また微睡んでいると、誰かが入って来た。
「光秀さん、
ようやく、死の淵から御生還ですか」
抑揚のない呆れた様な声音。
「……遅くなったな、家康」
「まぁ、10日なら早いほうでしよ」
家康が腰を下ろす。
「いいえ、別に、俺は、そのまま死んでくれてもよかったんですけど…」
「クッ…言ってくれる」
「…傷口、見ますよ」
下を向いている家康の横顔、
口角が上がっているのが見えた。