第29章 目醒めなくなるまでの幸せは(光秀)
勝利した小さな戦の帰り。
しんがり に居た俺に、死に損ないの敵の鉄砲隊の兵が、銃を放った。
こちらの兵が動き、草の音、足音に紛れ、
微かな火縄が燃える音も、
引き金を滑られせた音も、
誰も気付かなかった。
いや、気付けなかった。
銃声が響いた瞬間、
一番銃に近かった俺の馬が驚き、
嘶いて揺れて立ち上がった。
「‼︎、避けろ!蹴られるぞっ!」
揺れた方向が悪かった。
「ゔっっ‼︎……」
熱と摩擦の痛みに脇腹を抉られたと悟った。
「後方へ弓を放て!
その間に鉄砲隊準備!」
誰が誰に、指揮をしたのか分からない。
俺が兵に指揮をしているのだろう…か…。
意識と思考と軀がバラバラだ。
分からないままに、
こちらの兵が一斉発砲していた。