第18章 雨と紫陽花ー後ー(信長)
「あ".ぁ…っう…ぅ…わ…」
目下、1人の男が、文字通りアワアワ言っている。
「貴様が、貴様と言って軽んじた者に
刃を突き付けられる気分はどうだ?
クククク…ッ…」
信長は、紅く冷たい瞳で、腰を抜かしへたり込んでいる男を見下ろし、喉の奥で笑い続けている。
ククククっつくく……
「安心しろ。
貴様は殺しはせん。
後で連れ帰って可愛がってやる」
華月は坂の下、
繋いである馬の側でソワソワしながら信長を待っていた。
「あっ!のぶっ………」
華月は信長の名を呼びかけて、声を飲んだ。
「……そ、れ…っ…」
華月の視線の先には、
血のついた腕にいっぱい紫陽花の花を抱いて歩いて来る信長の姿。
青水色の紫陽花の花に、
肌についた赤い血のコントラスト……。
「ああ、とても綺麗だったであろう。
持ち帰って城に飾るのも悪くないと思ってな」
雄雅に、愉しげに、蠱惑に笑った。