第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
『俺は…自分で自分を赦すことは出来ない。
お前が赦すと言わぬ限り…許せぬのだ』
『景虎様……』
姫の顔がクッッと歪んだ。
『だから伊勢。
赦すと…俺を「赦す」と言ってはくれまいか……』
ようやっとの思いで、そう口にすると、
姫は愛おしそうに笑った。
まるで、昔、俺の文を胸に抱いて笑った時のように。
『…赦します。景虎様。
これからどんな事があっても、
伊勢は景虎様の全てを受け入れ、
許します』
そう言った姫の眼は、清凛と強く、優しかった。
『姫…』
『だって、私の願いは、景虎様の幸せですから。
ちゃんと幸せに、最後の時まで生きて下さいませ』
小さな花のように笑った姫は、
スッッと立ち上がると、背を向け、
吉祥天の方へ歩き、消えていった。