第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
堂の奥、吉祥天を見て眼を伏せた先程とは逆に、
下げていた眼を上げ、堂の奥を見た。
そんな俺の視線の先に……
姫が正座をして微笑していた。
『景虎様…………伊勢ことは、
もう十分で御座います』
(そんな……)
俺の想いが見せる都合の良い幻か。
『あれは全て、謀られた事だったではありませぬか。
景虎様は私を想い、十分に苦しんだ。
もう良いのです。
伊勢は、苦しむ貴方をこれ以上、
見とう御座いませぬ……どうか、もう、
ご自分を赦してあげて下さいませ』
透けて暗い向こうが見える、
儚い姫が、俺の頭の中に話しかけてくる。
(幻か、鬼か、幽霊か……)
それでも構わなかった。