第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
戸惑い、躊躇している俺を導くかのように
「謙信…ま……抱いて下さい…
…お願い…私を……」
誘われた。
「華月を、愛して下さい…謙信様…」
欲情に飲まれそうなクセに、
心の陰憂を見せるように愁訴してきた。
(………俺は……)
華月の声が俺の琴線を震わせる。
「…愛して、良いのか…?」
分からない。
「謙信様、愛して下さい。
貴方が私を愛してくれなければ、
私は何の為に独り、この時代に残ったのか分からないじゃないですかっ」
華月が堪え切れず、俺の胸に顔を埋める。
「私は…謙信様を愛してるから…
貴方を愛する為に、
貴方に愛される為に、此処にいるのに……」
悔しそうなくぐもった声。
「貴方は愛してくれない…
私はこんなに愛しているのに」
「…俺を、愛してくれるのか…
俺は、愛されて良いのか?」
誰に言うでもない、自問した。
※陰憂…隠しているうれい。
※愁訴…しゅうそ/かなしみ訴える。