第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
「…華月…」
俺は華月の軀を抱きしめた。
その軀はずっと床に背をつけていて、
すっかり冷たくなっていた。
冷たい軀は、あの時の姫の骸(むくろ)を思い出して怖い。
「死ぬなーー……」
暖を与えるように抱き締め直すと、
華月の指が俺の背中の着物を握って、
「華月は、生きてますよー……」
弱々しい笑い声で、そう言った。
「ーー……華月っ」
私は自分を自分の名で話すことはない。
私は、私だ。
けれど、私は今、私を見ていない謙信様に対して「華月は」と言った。
私が「華月」であると判って欲しかった。
私がここに居て、貴方が今、抱き締めている身体は、華月のモノだと言うことを。