第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
「…ごめんなさい……」
(信玄様…私には、解いてあげられなかった……)
不甲斐なくて、謝罪の言葉が無意識に溢れていた。
背中を押してくれた信玄様。
私なら出来る、と信じてくださった信玄様。
(また、失うのか…情けない…)
感情のの追いつかない頭でそう考えていた。
そんな俺の耳に入った他の者の名。
「……信玄様……」
その名に縋るような華月の声音。
(俺から離れ、ヤツの処へ往くのか)
「くっ…フッ…はははは…そう言うことか。
貴様も強かだな。
俺を捨て、信玄の元へ往くのかっ」
嗟嘆と共に熬憤(ごうふん)が勃発した。
※嗟嘆…さたん/なげく。
※熬憤…こげるように焼け付くようないきどおりと怒り。