第16章 愛を冷遇する者 R18ー後ー
「そんなに簡単にっ!
生きることを放棄するんですかっ」
間近にある謙信様の美しい顔を睨んで喚いた。
悲しみは怒りに変わる事を
私は今、身を持って知った。
「俺は死ぬべきだった。
失くしても構わぬ命なのだ。
それはお前も知っているではないか」
その抑揚の無い稀薄な声言は、
私の怒りを再び悲しみへと引き戻した。
「…ひどい…ひどいですよ、謙信様……」
私の謙信様を責める言葉は、
「ひどい?酷いのはお前ではないか。
こんな処に俺を誘(おび)きだしおって」
「謙信様は…私と………
私と、生きると言って、くれたのに。
なのに、やっぱり今でも、生きる事を、
簡単に捨てる言葉を口にするんですね…」
それを「ひどい」と言わず、なんと言うのか……。