第15章 愛を冷遇する者ー中ー
「貴様っ…正気か…」
「はい。…出来ませんか?」
震える俺の声とは反対に、
華月は静かで寂しげでいながら、
愁慈気味に問いかけてきた。
「当たり前であろう!
ここは姫の墓堂だぞっ。
こんな処で穢土(えど)を見せられると思うのかっ⁉︎」
忿恨にまかせ、睨みつけて、
身を退げると刀に手を掛けた。
そして見えた華月の顔。
辛苦と哀しみに眉を寄せて、痛みに耐えるような表情に見えた。
※愁慈…しゅうじ/うれいながらも慈しむ。
※穢土…現世、汚れた世界。
※忿恨…いかりうらむ。