第10章 君と猫さんとの1日(三成)
「野良猫?」
家康先生は素っ気なく私に聞いた。
「はい、多分」
短く答えて昨日の事を話した。
すると先生は何か考えてから口を開いた。
「飼う気がないなら治療はしない」
動物病院の先生が『治療はしない』と言ったことに私は呆気にとられた。
「腹部の骨が折れてる。
放っておけば衰弱して死ぬだろう」
「…それはっ…見殺しにするって事ですか⁉︎」
「怪我が治ったら野良猫に戻るのも酷だろう。
それとも、飼う気もないのに治療するボランティアかなにかのつもりなの?」
家康先生は冷ややかに私を見る。
突き放した、と言うか、刺のある言い方。
でも、
「拾わなければ、どうせ尽きる命だったんだよ…子猫は弱いから…」
寂しげな口ぶりで子猫を見る先生の眼差しは優しかった。