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第5章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *徳川家康ルート*
「―――…は?」
それは、先ほど嗅いだ胸やけするような香りと違い、優しく体を通り抜け、胸の奥底を擽っていく。
「―――…まさか、ハナ…っ?」
「え?」
家康の声音が途端に鋭くなり、ハナの手がびくりと震え、家康から離れた。
途端に香りも消えうせた。
「ハナ……何しに来たの?」
「の、信長様のお遣いで…みんなに書状を届けに…?」
「それ、見せて」
家康の切羽詰まった声音に、ハナは焦りつつも家康宛ての書状を取り出す。
風呂敷包みの中の書状が、あと二通しか残っていないことを家康は見て取った。
受け取った書状を広げながら、家康は視線を上げずにハナに尋ねた。
「ここに来る前、誰かに会った?」
「光秀さんと…三成くん。それから、秀吉さん…」
「……何かあった?」
曖昧な家康の問いに、ハナが戸惑う。
「光秀さんは、挨拶しただけで後でまた行くの。三成くんのところでは、握手して…秀吉さんには、いつもありがとうって頭を撫でられた…よ?」
「それだけ?」
「それだけっていうか……家康、これって何かの遊戯?」
信長の書状に目を通し、家康は不機嫌に顔を歪めた。
『先の妙薬の効用を己が身を以て検証せよ』
懐の小瓶に着物越しに軽く触れる。
先の妙薬――”紅蜜華”が懐の中、トプンと揺れた。