▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第5章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *徳川家康ルート*
ハナが家康の御殿へ着くと、その自室はもぬけの殻で。
女中に尋ね、ハナも庭へと降りて行った。
そして心配げに、空を見上げる。
僅かな日差しはあるものの、どんよりとした雲が近づき、空気が重い。
「さっきまでいい天気だったのに、降るのかなぁ……家康どこだろう?」
庭の端から端まで視線を走らせると、池のほとりにその姿を見つけることができた。
「……家康!見ーつけた!」
「…ハナ?」
庭先の池のほとりの大岩に腰かけて、家康はいつものように書物を読んでいるところだった。
視線を上げた家康は、やや驚いたような顔をしていた。
しかし、どこか表情が冴えない。
「…何か用?」
気まずそうに視線を逸らし、家康は再び書物に視線を落とす。
「……家康?」
俯いた家康の顔を、ハナが体を屈め覗き込んできた。
そのままじっと家康の顔を見つめる。
「…何してんの?」
「やっぱり……家康、顔色悪いよ?」
「ほっといて――…っ?」
家康の言葉は、ハナの行動で見事に途切れた。
不意にハナの手が家康の額に添えられ、息がかかるほど近くにハナの顔が近づいたからだ。
しばらく心配気に揺れていたその瞳が、安堵したように緩む。
「良かった、熱はないみたい」
「…当たり前。誰に言ってんの?…むしろ、あんたの方が熱、あるんじゃない?」
額に当てられた手が徐々に熱を帯びていく。
見上げれば、ハナの顔も仄かに赤い。
それに微かに、甘い―――…華の蜜の香り。