▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第22章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾参-
随喜の涙とは、ハナのそれをいうのだろうか。
光秀の指が、ハナの頬を流れる涙を拭ってやるが、拭う先からコロコロと真珠のように転がり溢れて止まらない。
拭うことは諦めて、その両頬を光秀の手がそっと包み込む。
猫のように、その掌にすりりと頬を摺り寄せながら、涙の溢れるハナの瞳が、もどかし気に光秀を見る。
ハナの唇が何かを呟こうとする度に。
「…っひっく…ふぅっんく…」
呼吸もままならないハナの声が、涙に震えた。
愛し気に、黄金の瞳がハナを見下ろす。
「…困ったな。お前の言葉で応えてほしいのだが…心変わりでもしたか?」
光秀のその言葉に、ハナの声は却ってひきつけを起こしたように乱れ、懸命に首を横に振った。
何度も口唇をハクハクと動かしては、言葉にならず、もどかし気に光秀の胸にしがみ付く。
「…こんな時まで、意地悪ですか…」
ハナの体を胸に抱きしめ、その髪を撫でながら、光秀は家康の言葉に苦笑を浮かべる。
「そう易々とは、人の性は変わらんさ」
言いながら、しかしハナを見つめるその表情は穏やかで、憑き物が落ちたというに相応しい。
家康の肩越しに、政宗がふっと小さく笑う気配がした。
「そう易々と、変わるもんだな…あいつ自身は、気付いていないが」
「…そうですね」
二人の姿を眺め、家康の表情が僅かに揺れる。
「今の、光秀さんになら…」
しかし、家康の言葉が言い終わらないうちに―――…
「―…もういい!お前に黙っていたことは、全面的に俺が悪いっ!!」