▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第20章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾壱-
ざわり。
男たちの、空気が揺れる。
「光秀…お前、そのために…」
「違うっ!!やめて光秀さんっ!!」
光秀が、ハナを見る。
「お前の姿が、生き様が…俺たちの希望だったのだ…」
その声はひどく静かで。
限りなく…優しかった。
「お前は生きろ…お前を育む世が来るのならば、この命、いくらでもくれてやる」
「そんなの、私は望まないっ!!」
裏腹に、ハナの声が泣き叫ぶ。
「未来なんて、途方もない選択肢の一つでしかないじゃないですかっ!この先だって、きっと私の知る過去とは違っていくはず…そんな曖昧な未来のことに…簡単に、命を諦めたりなんてしないでっ!!」
その瞳から、涙が溢れて止まらない。
「私がこの時代へやって来た意味を、ずっと考えてました…争うことが当たり前のこの世が怖くて…なんで私がこんな目に合うのかって、自分勝手に神を呪いたくもなったけど…それでもやっと、その意味を見つけられたんです」
ハナの短刀を握る手に、力が籠る。
「光秀さん…貴方に、生きてほしいと願った…」
「俺の命など―…っ」
「貴方の!思い通りに生きて…っ!誰の身代わりでも、影でもなくて…心のままに、貴方を生きて…っ!!」
『 己が 心のままに 生きよ 』
燃えていく…書状に踊る、文字が浮かんだ。
背後から、紅玉の瞳が、己を見ている気がした。
信長の書状に書かれた、光秀への命。
それが、ハナの唇から紡がれていく。