▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第20章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾壱-
「…ハナ…やるべきことは、わかってるだろ」
家康の声が、無情にハナにかけられる。
ハナの涙に濡れた瞳が、ひとつ、光を失っていく。
「家康…貴様っ!」
家康の胸倉を掴み、自らを引き離そうともがいていると。
「光秀を助けたいんだろう…ハナ?」
隻眼鋭く、政宗が言う。
ハナは静かに、瞳を閉じた。
「…すまない、ハナ…っ」
力なく、秀吉が言う。
ハナの持つ短刀の切っ先が、喉元へ向かう。
「―…やれ、ハナ」
誰よりも静かで、厳かな信長の声が飛ぶ。
「止めろっ!!!!!」
光秀の叫びに、ハナの瞳が開く。
その瞳が、光秀を見た。
「ハナ―――っ」
光秀が、眼を見開いた。
ハナのその顔は、どこまでも穏やかで。
―…満ち足りた笑みを浮かべていた。
「生きて―…」
ハナの首から、胸元へ。
美しく。
紅い華が。
静かに、咲いた。