▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第20章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾壱-
光秀の眼が、すばやくハナの声に向く。
その手に握られた短刀を見るなり。
「よせ…っ!!」
体と言葉が同時に動く。
駆け出しかけたその体を、しかし二振りの刀が鞘から引き出されぬまま交差し、妨げた。
「―…どけ…っ!」
「どくと思うか?」
「……」
暗く沈んだ隻眼が不遜に見下し宣えば、対側の秀吉は無言で光秀の行く手を阻んだ。
「御館様…っ!」
振り返り、主君を睨む。
変わらず片肘を突いたまま、信長はなんの感情も籠らぬ紅玉で家臣らの諍いを眺めていた。
「これは何の茶番です…っ」
しかし信長は何も答えず、やはりただ静かに、光秀を見返していた。
しばし睨み合い、光秀が先に業を煮やす。
「ハナの罪状は…?」
「表向きは、謀反の扇動…」
光秀たちから離れた場所に立ち、三成の声が静かに応える。
「しかしその実…貴方の尻拭いといったところです、光秀様」
「なんだと…?」
三成の返答に、光秀の声が尖る。
「貴方は策に溺れたのです」
「―…巫山戯たことを…っ!」
三成の短い言葉に、光秀は全てを読み取る。
行く手を阻む二人に対して、睨みを向けた。
「俺から奪えと、言ったはずだっ!」
「承知した覚えはない」
隻眼が、光秀を見下し小さく鼻で笑った。
対側の、秀吉を睨む。
「お前の妹分ではないのか、秀吉…っ!」
「御館様のなさることに間違いはない…俺は、忠義を尽くすだけだ」
「主君の本懐を汲んでこその忠臣だろう!!」
「お前に言われる筋合いはないっ!!!」
鞘ごと、刀を光秀の首に押し当て、秀吉の怒号が飛んだ。