▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第19章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾-
ひゅっと、ハナの喉がなる。
「ハナ…」
家康の、静かな声が名乗りを上げる。
「あんたの力じゃ、絶命までは無理だ。俺が介錯につく。いいね?」
俯き、表情の伺えないハナが、しかし静かに頭を振る。
「駄目だよ、家康…そんなこと、頼めない」
「ハナ…?」
ふわりと、ハナが家康に微笑みを向ける。
蒼褪め、体が震えているのを隠せもせず、しかし瞳は微笑んでいた。
「家康の刀は、家康に勝利を運んでくれる大切な刀でしょ。必ず、帰ってきて欲しいから…幸運のお守り…私の血で、汚したくはない」
そういうと、震える手を三方の上へと伸ばす。
「その代わり…教えてくれる?切腹って、絶対お腹を切らないといけないの?」
刃先を、自らの首へと向ける。
「例えば、首は…?」
「あんた…本当に、バカ…」
眼を手で押さえ、俯いた家康がはぁ…とひとつ、溜息をつく。
その肩は、わずかに震えていた。
「…いいよ、首でも。それなら…ここ」
家康の手が、ハナの持つ短刀の切っ先を首筋の一点へ向ける。
「違わず、ここを一気に突いて。すぐに呼吸が途絶えて、楽になる…」
短刀の刃を握る家康の手に、震えがますます大きくなったのが伝わってきた。