▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第19章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾-
手の震えは、止まらない。
しかしその手で、ハナは酒の入った盃を持つ。
一杯目を、四度に分けて飲み干した。
「家康…お願い」
無言のうちに、家康が再び、盃を満たす。
それも四度で、飲み下した。
椀を持ち、箸で口に湯漬けを流し込む。
体が拒んでなかなか飲み下すことができなかったが、時間をかけて飲み込んでいく。
そう多くもない膳を、時間をかけて平らげていく。
誰も急かすことなく、言葉を発することもなく。
ただ、雨の音だけが響いていた。
コトン。
ついに全てを飲み込み、空になった膳を家康が衝立の後ろへと引いていく。
次に現れた時、その手には三方が握られていた。
静かに、それをハナの前に置く。
三方の上には、刃の部分に白紙が紙縒で結ばれた短刀が光っていた。