▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第19章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -拾-
「…っ私は、まだ…疑われていたんですか?」
ハナの瞳が、涙に揺れるも、固く目を瞑り雫が零れるのを避けた。
泣いている場合ではないと、その手を固く握りしめる。
心を落ち着かせるように、ゆっくりと大きく息を吐きだし、再び、顔を上げ信長を見た。
秀吉を見た。
目をそらさずに、ハナを見つめるその眼は、何かを必死に堪えていた。
政宗を見た。
ハナを睨むその眼光には、しかし憎しみは見られない。
まるで、ハナを励ますかのような光を宿してさえ見えた。
三成を見た。
ハナを目が合うと、軽く目を伏せ、ハナと同じく、探るように信長たちを見渡した。
憂いを含むその眼は、しかし同時に知性の光を称えていた。
信長を見た。
紅玉の瞳は、ただ、ハナを見ていた。
感情という名を、全て捨て去ったようなその瞳が一瞬、黄金の瞳に重なる。
本当に、疑われているのだろうか。
誰一人として、ハナを蔑む様子もない。
しかし、冗談だと言ってからかう様な余裕もない。
ハナの鼓動が、少し、落ち着きを取り戻していた。
「あんたが光秀さんをどうこうできたとか、誰も本気で思っちゃいないよ」
「…家康…っ?」
背後の衝立から、膳を携えた家康が現れた。
その膳をハナの前に置く。
膳には簡素な食器に、銚子に盃、湯漬け、香の物、塩、味噌が添えられ、逆さ箸が添えられていた。
「切腹の作法、知らないでしょ?教えてあげるから、ちゃんとやりなよ」