▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第18章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -玖-
雨脚がさらに強まった、坂本城。
安土城に伝達のために配置していた家臣が、早馬に乗りその門を駆け抜けた。
門兵もただならぬ様子に、無言のままに馬を通した。
馬上の家臣の顔は蒼褪め、無言のままに荒ぶる馬の手綱を馬番に押し付けるや否や、草履を脱ぐのももどかしく、足音猛々しく城内を駆けあがっていった。
「光秀様ーーーっ!!!」
光秀の自室へ辿り着くまでの間ももどかしいか。
男は仕える主の名を叫び、なお駆けた。
光秀の自室へ辿り着くや、その内側から障子が開かれ、光秀の側近が顔を覗かせた。
「何事か――…」
「光秀様っ!!安土城にて、ハナ様が――…っ!!」
「ハナが、どうかしたか?」
部屋の中から、光秀が問いかける。
駆けつけた男の頬を、雨とも汗ともつかぬ水滴がとめどなく流れていた。
「状況からの、推測ではございますが――…」
肩で息を継ぎながら、それでも懸命に声を絞り出す。
「本朝早く、湯殿の準備がされ、三成様の案内でハナ様が沐浴を…」
その言葉で、光秀の瞳がわずかに見開く。
「召し替えは…」
「――…私が盗み見た限り…」
ごくり。
男の唾を飲む音が、やけに響いた。
「女中が運び込んだ衣は、白無地の小袖と浅黄色の帯…」