▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第18章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -玖-
湯殿の入り口には、女中が二人控えていた。
ハナと歳も近く、何かとハナを気にかけていてくれた二人だ。
その二人の表情が、ハナの姿を目にした途端に、涙に歪んだ。
一人など、堪えきれずにむせび泣いてその肩を震わせていた。
「ハナさ…ま…」
「ど、どうしたんですか二人とも…っ」
物言わず、ハナに縋る二人の女中に、ハナが腕を回し、抱きしめた。
三人共に抱き合う形で、ハナは二人の涙が乾く時を待っていたが、そこへ、非情の声が降る。
「貴女たち…」
びくりと、女中達の体が震えた。
ハナもまた、三成を仰ぎ見た。
三成が、感情のない瞳で三人を見下ろしていた。
「時がありません。今は…お役目を果たしてください」
「三成様…ですがっ!」
「嫌です!こんなことおかしいですよ、なぜハナ様が――っ!!」
「口出しは無用ですよ」
常になく、有無を言わせぬ三成の声音に、二人は言葉を無くして息を飲む。
「二人とも…」
女中らの肩に触れ、できる限り普段通りの声であることを願い、ハナが微笑む。
「よくわからないけど…よろしく、お願いします…ね?」
ハナの気遣いは、結局二人を涙の淵に追いやることになったのだけど。