▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第18章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -玖-
「三成くん…っ!」
「…ハナ、様…」
花かと思った。
それくらいに儚く、薄らいだ気配の中で細雨に己が濡れるがままにさせていた。
色素の薄い、柔らかなその髪を、雨の雫が滴っていた。
ハナの中の不安が一層、色濃く湧き上がる。
胸に当てていた手を懐へ入れ、慌てて手ぬぐいを取り出した。
「こんなに濡れて…っ!いつからそこにいたの、三成く――…」
雨を拭おうとしたハナの手を、三成がそっと握り返した。
「私は…いいのです」
揺れる菫の瞳を隠すように、その表情を前髪に隠す。
「ハナ様、湯殿の準備ができております…沐浴を」
「沐浴?こんな、朝早くから…?」
なぜ――…
そう、問う間もなく三成の腕がハナの肩を掴み、湯殿へと促していた。
なぜ、瞳を合わせてはくれないのか。
なぜ、何も話してくれないのか。
なぜ、その腕が震えているのか。
ハナの脳裏に、いくつもの”なぜ”が浮かんでは消えていく。