▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第17章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -捌-
ここ数日は雨も降らず、日和が続いていた。
安土城の庭は、日差しを受けて今日も生命力にあふれた緑に萌えていた。
そんな庭から、声がする。
鈴が転がるように、何より耳に響く心地よい笑い声が聞こえた。
視線をやれば、庭に二人の姿が見えた。
一人は三成。
こちらに顔を向け、対面する人物に合わせるように腰を曲げていつものように柔らかな笑みを浮かべていた。
その、対面する人物に視線を向けた。
こちらに背を向けて、ハナがそこにいるのが見えた。
三成が、ハナに何かを抱かせている。
どうやら、飼い猫を連れてきたらしい。
何を話しているかは知れないが、時折笑い声が風に乗って流れてくる。
遠く離れた廊下の端から、光秀は二人の姿を眺めていた。
こちらに背を向けたハナの肩が、愛らしく揺れる。
小首を傾げるに合わせて、艶やかな髪がその肩を柔らかく滑り落ちていく。
離れていても、ハナの姿だけは周りから浮き上がるように、良く見えた。
表情は、見えない。
しかし、光秀の瞳には映って見えた。
見るもの全てを魅了する、どこまでの穏やかで、しかし意思のこもったあの笑顔…
光秀の口唇が、一度だけその名を模る。
しかし、声音を乗せて紡がれることはなく。
口唇を閉じ、ふっと笑みを作る。
そのまま、庭に背を向け、その場を去ろうとした。
――その時だった。