▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-
――甘イ蜜ガ ヤッテキタ…
それは、光秀の内から耳に響き渡っていた。
――欲シイノダロウ…
躰が、応えるように熱を持つ。
――望メバ善イ…一夜ノ蜜ヲ…
「――何でも、やるというか…?」
唇が、他人の物の様に勝手に動き言葉を紡ぐ。
「ならば、間諜として仕込まれてみるか?」
己の手が、勝手にハナの頬をなぞる。
光秀の手が頬に触れた瞬間に、ハナの体がびくりと震えた。
(やはり、俺が恐ろしいか…)
頭の中では冷静に、そんな言葉も出てくるものを。
体が、とんと言うことを聞かない。
「間諜って…どうしたら、いいんですか?」
(乗るな…ハナ…っ)
心と体が、分離する。
「お前ほどの見目ならば、あるいは容易いかもしれないな…」
「――っみつ、ひでさん…」
震えるハナの体を、光秀の腕が抱き寄せていた。
「悦楽を手懐けて、男を誑かす術をお前に仕込んでやろう…」
ハナの耳元で、甘く囁き、耳介に口付けを落としてやれば、ハナの細腕が、震えながら光秀の体を抱きしめ返した。
――逃げろ。
心の中で叫びながらも、体がそれに伴わない。
光秀の耳に、遠く、時の鐘が鳴る。
四半刻ほどで、あの男が来るだろう。
黄金色の瞳を、祈るように静かに閉じる。
――喰エ。
鈴が鳴る。
勝手にしろ、と。
光秀の声が、呟いた。