▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-
「…光秀さん」
光秀は、文机に向かいハナに背を向けていた。
ハナの呼び掛ける声に、ようやくゆっくりと振り返る。
「――っ!」
振り返った光秀の表情を見て、ハナはふっと息を飲んだ。
表情のない、ガラス細工のような瞳。
血の気のない、青白い顔。
そして…笑みの無い、冷たい口元。
「…誰かと思えば、小娘か」
低い、声音。
怒気とは違う、人を寄せ付けない圧力のある声音に、ハナの背筋が震えた。
しかし、ハナは両の手を拳に握り、光秀の部屋へ、足を踏み入れた。
後ろ手に、障子を閉める。
光秀を見つめたまま、その正面へと足を進め、そこへ座した。
その動作を、光秀はただ感情の無い顔のまま見つめていた。
「…お久しぶりです。光秀さん」
「長らく、病んでいたそうだな…もう良いのか?」
「はい。世話役の仕事、長いこと休んでしまってごめんなさい」
「俺に謝る必要はない…原因は、俺だろう…」
「…それは…っ」
ぎこちないままに、会話が交わされ、そして途切れた。
沈黙が続いた最中、不意に、くくっと小さく光秀が笑い声を漏らした。
「休んだことなど、気に病むな。お前の代わりの者などいくらでもいる」
「――っ!」
膝の上に置いた、ハナの拳が小さく震える。
光秀の言い様が、まるで自分を不要と言っているような気がした。
「――これから、頑張って挽回します!」
「…ほう、どうやって?」
病んでいる間に、心に決めたことがあった。